フィリップモリス社が「加熱式タバコ」押しの一面広告を出しました。
同社は営業戦略的に、もう紙巻きタバコには見切りを付けたんじゃないかと思います。言い換えると、紙巻きタバコが地上から消滅しても自分たちは加熱式タバコで食ってゆく、そして加熱式タバコを吸う人が増えて欲しいというわけでしょう。
で、この一面広告ですが、先日のJT車内吊り広告のような私の整理のしかたをパクったものではないですが、改正健康増進法のアピールとしてはやっぱり残念な広告ですね。
上段で、改正健康増進法についてポイントを解説しているのは、まあよいでしょう。
ただ、喫煙エリアに20歳未満が立ち入れないこと、及び喫煙室での標識掲示義務に触れているのはよいですが、20歳未満が立ち入れないことの掲示義務があることは落としていますね。この点に触れないのは、JT車内吊り広告と同様の残念さを感じます。
中断のグラフはまあデータに基づくもののようなので、よいでしょう。その中身自体は目新しいものではありません。
一方で、下段の「ご担当者の声」は、ダイエット食品の「お客様の声」レベルの記事で残念感がはんぱないです。
何より大事なのは、改正健康増進法が加熱式タバコをどう扱っているかということでしょう。
改正健康増進法によって、オフィスは原則禁煙になります(第二種施設=「多数の者が利用する施設」=「2人以上の者が同時に,又は,入れ替わり利用する施設」)。
オフィス内で、紙巻きタバコを吸えるのは「喫煙専用室」を設ける必要があります。「専用」である以上、そこは執務室や会議室には使うことはできません。
ただ加熱式タバコについては附則で別取り扱いが認められています。「加熱式タバコ専用喫煙室」というものの設置が認められており、そこは執務室や会議室にすることができることになります。
但し、オフィスの「一部」である必要があります。オフィスの「全部」を「加熱式タバコ専用喫煙室」にすることはできません。
「一部」である以上、間仕切りが必要になります。
具体的には飲食店と同様に、壁・天井で区画、0.2m/s以上の気流、屋外または外部への排気が求められます。
つまり、それなりの設備投資が求められるというわけです。
こんな設備投資をしてまで、「加熱式タバコという喫煙対策」をすることが、企業活動として合理的なのかという話になります。
なお、フロアで分ければ上記の間仕切りに代わるものになるようですが、フロア分けは人員配置上の問題もからむところ、加熱式タバコ喫煙者か否かを人員配置で考慮するのも変な話です。
つまるところ、「加熱式タバコという喫煙対策」というスローガンは、オフィスにいる人が全員加熱式タバコを吸うようになれば別ですが(そしてフィリップモリス社はそれを狙っている)、そうで無い限り、フィリップモリス社の主観にとどまるものであり、何の対策にもなっていないと考えるべきでしょう。
なお、今般の改正健康増進法においては、加熱式タバコは「他人の健康を損なうおそれがあることが明らかでない」として別取り扱いが認められましたが、改正法成立後に、WHOがその受動喫煙の危険についてレポートをまとめました(こちら)。今後、見直しが検討されるべきでしょう。
この点、兵庫県受動喫煙禁止条例は、加熱式タバコと紙巻きタバコを同列に扱っている点は評価できます(つまり、兵庫県内では「加熱式タバコ専用喫煙室」は設置できない)。