WHOが本年7月26日に「2019年世界的なタバコ蔓延に関するレポート(WHO REPORT ON THE GLOBAL TOBACCO EPIDEMIC, 2019)」を発表しました。
原文はこちら
その中で「加熱式タバコ」に関して
・紙巻きタバコと同様の有害物質が排出されていること
・使用者が有害物質にさらされるだけではなく,周囲への受動喫煙も発生している。
・紙巻きタバコよりも危険度が低い有害物質もあるが,逆に高いものもある。そして,低いレベルであるからといって,健康リスクが下がることを意味しない。
・紙巻きタバコと同様に規制されるべきである。
と述べています(52-55ページ)。
今般の改正法では「加熱式タバコ」は,附則において,いわゆる紙巻きタバコ(従来型タバコ)と異なる取扱を受けています。
つまり,(既存店舗への例外措置(こちら)を除き)紙巻きタバコを吸いながら飲食可能という形態はもはや存在しないことになりますが,「加熱式タバコ」については,これを吸いながら飲食可能という形態も認められています(加熱式タバコ専用喫煙室のページ参照)。
これは,「加熱式タバコについても・・発がん性物質が含まれていることは明らかでありますが,現時点の科学知見では,その受動喫煙による将来的な健康を予測するというのは大変難しい」(厚労大臣答弁 H30/6/13衆議院厚労委員会)という認識のもと,別扱いをしたというものです。
規制はするべきことは分かっているけど,今のところよく分からないので,紙巻きタバコとは別の扱いにしました,というものです。
今のところよく分からないというのであれば,分かるまで,紙巻きタバコと同じ規制にすればいいのではないかという指摘もありますが,首肯できるところです。
いずれにせよ,上記WHOのレポートで,オーソリティのある知見が出たということではないでしょうか。
とすれば,加熱式タバコについて従来の紙巻きタバコと異なる扱いをするべきであるという立法事実が失われることになります。
つまり,両者を別扱いする合理的理由はなく,国民の健康と安全を守るという見地に立つ限り,紙巻きタバコに対する規制と加熱式タバコに対する規制は同様にするべきことになります。
ただ,「加熱式タバコ専用喫煙室」は,店舗の全部に設けることはできず,一部に設けることができるにとどまります。
つまり,「加熱式タバコ専用喫煙室」を設けるには,それなりの飲食店の規模が求められ,設備投資も必要になります。
そして,お客の喫煙のニーズは,もっぱら紙巻きタバコに対するニーズであり,加熱式タバコに限定したニーズというのは,そう多くないのではないかと予測します。
となると,この「加熱式タバコ専用喫煙室」というものは,実際には利用される場面は多くないんじゃないかなと思う次第です。