2020.2.9 報告フォーム 改正法について

なじみの店を禁煙にしてもらう方法

もともと本サイトは、飲食店経営者のために改正健康増進法の情報を提供することを目的にしていました。
しかし、施行日(2020/4/1)まで2ヶ月を切り、少なくとも改正法を守ろうというところは、既に何らか対策を採っているという印象です。
今に至って何もしていないところは、改正法をご存知ないか、そもそも改正法を守る気がないか、その双方かのいずれかじゃないかと思います。

そこで視点を変えて、お客さんの立場から「なじみに店を禁煙にしてもらう方法」という視点で話を整理したいと思います。以下、経過措置を使える小規模なお店を想定しています。

① まず4月1日から法律が変わることを教えてあげてください。

4/1から飲食店の屋内部分は原則として禁煙になります。
そもそもこのことをご存知ない、なんか保健所からシールが来てたなあというくらいの認識しかない方がいらっしゃいます。

② 喫煙可の場合、店の出入口に「20歳未満立入禁止」であると掲示しなくてはいけないことを教えてあげてください。

改正健康増進法によっても、小規模なお店なら従来通り喫煙可にすることもできますが、その場合、店の出入口に
喫煙可能店であること
20歳未満立入禁止であること
を掲示
する義務があることを教えてあげてください。

下の図は厚労省が推奨する出入口に掲示するべきマークです。
このように
「20歳未満立入禁止」と出入口に表示する義務があります。
「18歳未満立入禁止」のお店よりもハードルが高くなります。
ことさら大人のみをターゲットにするお店でない限り、店の出入口にこんなもの貼りたくないというのが、正常な経営感覚でしょう。

その他、
・お店の広告宣伝で喫煙可能であることを表示しなくてはいけないこと。
・喫煙可能店であることを保健所に届け出る義務があること。
といった規制もあり、これらも守らなくてはいけないことを教えてあげてください。

③ あなたが来店できなくなるかもしれないことを教えてあげてください。

あなたが20歳未満である場合、もうこの店に来ることができなくなるということを伝えてあげてください。
あなたに20歳未満の家族がいる場合、もう家族で来店できなくなるということを伝えてあげてください。
職場に20歳未満の人がいる場合、もう職場のみんなで来店できなくなることを伝えてあげてください。

20歳未満立入禁止の掲示をすることだけではなく、喫煙できるエリアには現実に20歳未満を立ち入らせることができなくなります。
あなたがorあなたにとって大事な人と一緒に食事に来ることができなくなることを伝えてあげてください。
ちなみに、ランチタイムのみ禁煙や週末のみ禁煙であっても、店内で喫煙できる時間帯があれば、24時間365日、20歳未満立入禁止のお店になってしまいます。

④ 罰則があることを伝えてあげてください。

たとえば、喫煙可能であるのに、店の出入口に、喫煙可能店であることと20歳未満立入禁止であることを掲示していない場合、罰則があります。50万円の過料です。大きい金額です。

⑤ いろいろめんどくさいなあと言われたら、禁煙にすれば全くめんどくさいことはなくなると教えてあげてください。

改正健康増進法の構造は、店内を原則禁煙として、喫煙できる例外を4つ設けるとしています。
そして、その例外が適用されるための要件を細かく定めています(こちら)。

正直めんどくさいです。やってられません。
しかし、これは例外措置を受けようとするから、めんどくさいのであって、原則に従うなら何もめんどくさいことはありません。
つまり、原則通り禁煙にしてしまうのが、もっとも簡単で、法律違反の心配もない方法であると教え上げてください。
あわせて、喫煙者は国民の17.8%に過ぎないこと(厚労省 平成 30 年国民健康・栄養調査結果24ページ pdf)、中でも低所得者ほどその割合が高いことも(同5-6ページ)お伝えしてよいかもしれません。

改正法によって、およそ屋内というのは原則として禁煙であるというのが、新たな社会のルールになります。
喫煙可というのはあくまで例外なのです。
原則は禁煙であるため、禁煙にする場合は改正健康増進法は何も規制を設けていません。
喫煙可という例外状態を作る場合には、上記のとおり出入口に掲示をしたり、広告宣伝で表記したりといった、めんどくさい義務が出てくるのです。

⑥ それでも直らない場合は、保健所に報告しましょう。

お客さんのことを大事に思っているお店 or 社会の一員としてルールを守ろうという意識のあるお店なら④くらいまでで、なんとかしてくれるはずです(20歳未満立入禁止のお店にするという対応を行い、出入口に掲示をするというお店もあるでしょうが、それはひとつの経営判断です)。
しかし、それでもなお店内で喫煙しているのに、出入口に掲示を行わない、20歳未満を店内に入れているなど、健康増進法違反を無視している場合は、監督官庁に報告するしかないでしょう。あまりやりたくないことですが、管轄の保健所に報告するわけです(但し,小規模な市町村は都道府県が窓口になるため,管轄の保健所に確認してください)。
想定されるよくある違反形態を類型化し、報告フォームを作成しました。
→ ワードファイル報告フォームver1.0
pdfファイル報告フォームver1.0
解説はこちら

よくある違反形態としては次の通りです。
① タバコ(紙巻きも加熱式も)が吸われているのに、喫煙可の標識が飲食店入口に掲示されていない
② 店内が喫煙可であるのに、広告宣伝で示されていない
③ 大きな規模の飲食店であるのに or 2020年4月1日以降の開業の飲食店であるのに、喫煙しながら飲食がなされている。
④ 喫煙可能なスペースに20歳未満がいる(お客も従業員も)。
⑤ 喫煙可能なスペースの間仕切りが不十分でタバコ煙が漏れている

これら、想定される、よくある違反形態に出くわした場合、チェックボックスにチェックを入れて報告できるようになっています。
好きなお店相手に、あまり使用したくないですが、最後の手段としてお考えください。
とはいえ、法律なんて無視して構わないという感覚の人は、お店の衛生面においても法律を無視している可能性があるので、別の意味で行きたくないなあと個人的には思います。

以上です。法律ガーという態度は好きではありませんが、他方で法律なんて社会の最低限のルールに過ぎません。
つまりビジネスを行ううえで守って当然のラインであるわけです。
法律で白か黒かなんていうレベルが低いライン上を行ったり来たりするのではなく、もっと高い次元で経営のことを考えられるお店であってほしいと思います。

藤原 唯人(ふじわらただと)

本サイト作成者 弁護士 藤原 唯人 (ふじわら ただと)

プロフィールはこちら

兵庫県弁護士会所属(2000年登録)
神戸パートナーズ法律事務所
(神戸市中央区)にて執務
http://www.kobepartners.net/
日本タバコフリー学会会員